2015年4月に読んだ本
2015-05-01


仕事がばたばたしているのでさくっと読めるもの中心。『守り人』マラソンは概ね終了で番外編あと1冊。

■上橋菜穂子『天と地の守り人』第二部 偕成社
 『蒼路の旅人』以降のほとんど徒手空拳のチャグムの行動がようやく実を結ぶラストでちょっとほっとする。

■川端裕人『12月の夏休み ケンタとミノリの冒険日記』 偕成社
 ニュージーランドに住む小学生がデジカメを父親に届けようとするが、行った先には父親はすでにいなくて追いかけているうちに南島の北端から南端まで(アウトドア成分ありの)旅してしまう「父をたずねて三千里」的な話。モチーフは『十五少年漂流記』とのこと。主人公たちが普段暮らしている南島北端の国立公園は2回行ったことがあるので親近感。

■上橋菜穂子『天と地の守り人』第三部 偕成社
 三国同盟を達成したチャグムではあるが、その後の道行きは血塗られた道で、いろいろと原作版『ナウシカ』を思わせるところもあり。その奮戦も、民の目からはほどなく神の子物語としての神格化されてしまうあたりがビターな味わい。ちょっと駆け足、詰め込み過ぎの印象は否めないが、堂々完結。
 原作版『ナウシカ』も連想したが、主人公たちの泥臭い物語が後に神格化されるあたりはむしろ堤抄子『聖戦記エルナサーガ』の方が近しいかもしれない。

■川端裕人『続・12月の夏休み ケンタとミノリのつづきの冒険日記』 偕成社
 今度は『不思議の国のアリス』をモチーフにした、前作から1年後の物語。ニュージーランドの不思議な鳥たちが大活躍。キウイはオークランドの動物園で見ようとしたけど、保護のためとのことでに照明が暗くてあまりよく見えなかったっけ。この調子だともう一冊くらい書かれたりするのかも。著者本人が撮影している写真もちょっと楽しい。

■北村薫『太宰治の辞書』 新潮社
 なんと前作から17年を経て創元ではなく新潮社から出た「円紫師匠と私」シリーズ最新作。『六の宮の姫君』で一冊丸ごと文学論をやってから、それまでの日常ミステリから書物をめぐるミステリになった「私」シリーズだが、経過した年月の分、「私」は中学生の息子のいるベテラン編集者で円紫師匠は大トリに。
 今回は芥川「舞踏会」と太宰「女生徒」をモチーフに、「私」がそれぞれの作品に対してふと抱いた疑問を解いていく過程が淡々と描かれる。確かに「謎解き」的な構成はあるものの、その読後感はもはやミステリでも文学論でもなく、本を読むこと、読み解くことのささやかな愉悦についての物語。

■上橋菜穂子『流れ行く者 守り人短編集』 偕成社
 バルサの少女時代を描いた連作短編集。いずれも老境にかかった人物に焦点を当てた哀感を感じさせるエピソード集。挿絵が今回は鉛筆のラフっぽいタッチだが、このタッチの方が好きだな。

■七月鏡一・早瀬マサト『幻魔大戦Rebirth』1巻 小学館少年サンデーコミックススペシャル
 WEBで無料で読めるクラブサンデーでの月刊連載からの初のコミックス。これは液晶画面ではなく紙で読むべき作品と確信。キャラクターの表情の繊細なニュアンス、細部まで手抜きのない作画、マンガならではのエフェクトは職人芸。キャラクターとしても「ジュン」が登場するが、「ファンタジーワールド・ジュン」を連想させるレイアウトやエフェクトが随所に出てくる。石森タッチでありながらさらに緻密で現代的なニュアンスもある画風が素晴らしい。
 ストーリー面でも、オリジナルの少年マガジン版の展開をなぞりつつ、小説版の設定も盛り込まれており、平井和正が一般には流通しない舞台で完結させたバージョンとは異なる、シリーズの統合を指向しているあたりも好感触。「幻魔」が黒歴史になっている人にもオススメしたい。

■那州雪絵『魔法使いの娘ニ非ズ』5巻 新書館ウィングスコミックス

続きを読む

[小説・マンガ]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット